観ました。
脚本・監督は前作日『セッション』で話題をかっさらったデミアン・チャゼル。
もうね、最高。
オープニングの渋滞の高速道路でのダンスを観ただけで、この作品にかける熱量と仕事量は把握できる。
長回しのカメラ、俳優たちが歌い踊る模様、それが一つの作品としてもはや完結している。
話は、ムービースターに憧れる売れない女優のミアと今や廃れた音楽となったジャズを何より愛する時代錯誤な男セブ(セバスチャン)の恋物語。
月9ドラマみたいに仲の悪い関係からはじまって、次第に惹かれあっていく、分かり易い筋。
ストーリーももちろん大切だけれど、この映画の見所はそこではない。
現実のドラマのリアリティとミュージカルで華やかに踊る虚構世界が絶妙なバランスでミックスされている。
どちらもライトな味付けでさっくりやっているのではなく、深く深く掘り下げて濃厚に仕上げているからすごいのです。
ドラマの深み、リアリティを突き詰めながら、虚構のミュージカルだってとことんやっちゃってる。
それがちぐはぐにならないのは、接着面を繊細に工夫しているから。
ミアとセブの会話から歌と踊りに入るシーンなんかでも、無理のない設定でフェードインする。
例えば、ヒールで足の疲れたミアがシューズに履き替えるシーン。
自然な流れでタップシューズを履いて、二人でタップダンスがはじまる。
この辺りは絶妙な演出だ。
あと、音楽ももちろん素晴らしいが、映像がきれい。
色にこだわってると思う。
カラフルなのだけど、大人のカラー。
つまりディープカラーで色彩鮮やかに映し出す。
この「大人さ」がライトな印象へ移りがちなミュージカルへの重みとなる。
歴史的な映画作品、またはミュージカルをオマージュした構成、見せ場の数々。
そして現代のカメラにしか出来ない躍動感ある動き。
昔と今を絶妙にミックス。
映画好き、ジャズ好き、またはそのどちらも好きな方にはたまらないと思う。
いわゆるオタク系の愛情の深さを登場人物からも、監督からも感じる。
だからデートがダサかろうが、身に付けているものがダサかろうが、なんてことない。
何かのオタクである人は、彼らのそんな姿が愛おしくってならないはずだから。
脚本がとにかく面白い。
大筋は分かり易く、セリフや人物設定の細かさには何度も笑わされた。
付き合っていた彼氏がミアを迎えに来た時の「駐車場の真ん中に駐めれたよ」っていう一言。
それだけで馬鹿っぽさが伝わる。
音楽のセッションだけでなく、会話のセッションも抜群だったなぁ。
相手の期待に応えたくてバランスを失っていく。
それは一人の問題ではなく、一人のバランスが崩れると(良くなろうが悪くなろうが)二人のバランスも崩れていく。
この辺りの心の動きの描き方、リアリティのあるミアとセブの演技でもう大満足。
ラストは賛否両論あるだろうけれど、僕はデミアン・チャゼル監督のやりたいことが全部見れて幸せだった。
なるほど、これをやりたかったんだ。
映画館に観に行くべき作品だと思います。
充分チケット代の元は取れます。
そして、今後人間の身体を駆使したエンターテイメント系の映画、かなり難しくなるだろうなぁ。
ラ・ラ・ランドが全体のハードルを上げてしまった気がします。