世界一のおもてなし

メートル・ドテルの宮崎辰さんの著書。
今週末に宮崎さんのトークショーの司会のお仕事が。
数年前読んだこの本を本棚から引っ張り出してきて、再読。
トークイベントのための予習と思いながらも、やっぱりすごい。

2012年「クープ・ジョルジュ・バティスト」サービス世界コンクール東京大会で世界各国の代表と競い合い、見事優勝。
宮崎さんは世界一のサービスマンとなります。

サービスマンの世界大会?
そんなのがあるの?

って思うかもしれません。
それが、あるんです。

内容がこれまた想像を絶するもの。
例えるならば、武井壮さんて有名になった「陸上10種競技」のようなもの。

どういうことなのかというと、100m走に走り幅跳、砲丸投げ、棒高跳びなど計10種の種目のトータルを競い合うように、クープ・ジョルジュ・バティストの大会では、

肉のデクパージュ(切り分け)からフルーツカッティング、フランス語英語でのお客様との会話からオーダー、ワインのブラインドテイスティングに栓抜き、デキャンタージュ、チーズの切り分け、カクテル作り、コーヒーまで

あらゆるサービスを一連の流れの中、競い合います。
要は圧倒的な知識と技術、または語学力に教養、美しさが求められるのです。
料理人、ソムリエ、バーテンダー、バリスタ、接客。
飲食のありとあらゆる分野を網羅していなければ成立しないスペシャルな競技なのです。
その世界で一番ですよ。
宮崎辰さんのサービスマンとしての凄さを分かってもらえましたでしょうか?

本書は「世界一」への道のりを描いた物語。
宮崎さんの哲学と理念が刻まれております。

料理はシェフが美味しいと思うものを出せば良いのですが、サービスはお客様を主体とします。
つまり、お客様はシェフの作る料理を食べにくるのであって、シェフがお客様に合わせるわけではない。
これがサービスの場合は逆になる。
サービスマンが「良い」と思うサービスを先行するとお客様の好みが分かれてしまいます。
そうではなく、サービスマンはお客様それぞれが求めるものを先読みして提供する必要があるのだ、と。

洞察力と日常の意識を鍛えること。
そして、それぞれのテクニックを日々磨くこと。
何より「継続」の大切さを宮崎さんは訴えております。
「クープ・ジョルジュ・バティスト」の大会のための類稀なる努力、その日々の蓄積が自信をもたらせた。
それらのストーリーはサービスの業界だけでなく、あらゆる職業にも言い得ることだと思います。

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人生の勝算

SHOWROOM株式会社代表取締役社長、前田裕二さんの著書。

SHOWROOMとは「仮想ライブ空間」というキャッチコピーで知られる2013年11月にスタートしたライブ配信サービス。
素人からプロまで、どんな人でもインターネット上のライブ空間でパフォーマンスをできるクリエイティブな場所。

この方の自伝と成功哲学を掛け合わせたようなビジネス書。
「人は何に対してお金を払うか」
それはクオリティよりも絆や当人との間に流れる物語だと著者は語る。
自身が小学生の時にギター一本、路上での弾き語りでお金を稼いだ体験から分かりやすく論理を展開してゆく。
数々の失敗と反省、気付きと改良。
試行錯誤を繰り返し、学んでいく著者の姿に親近感を覚える。
そしてまた、未熟な少年を応援したくなっている自分に気付かされる。

これが非常に重要で、著者は「余白」がコミュニティの結束力を強めると語る。
完璧なパフォーマンスを見せる者よりも、不完全だが愛らしい者の方が人は応援したくなるのだという。
だからアイドルは完璧ではない。
未熟で、不完全で、余白が多いからこそ、皆は応援したくなる。
今はやりの言葉でいうなら「かわいい」というやつだ。
完璧なものに「かわいい」と形容することはない。
どこかユルく、抜けているけど、一生懸命がんばっている。
そんな姿を見て人は「かわいい」と言う。

著者はその「余白」からくる結束力をスナックに例える。
スナックは提供される飲み物やサービスよりも、人間的な繋がりが重点的に置かれている。
ママと客との繋がり、または客同士、コミュニティとしての繋がりに対価を払う。
常連客と共有する物語や絆によって商売は成立するのだ。
この辺りの論理展開がおもしろい。

ママの存在がユルいほど、常連客同士の結束力は高まる。
ママは完璧である必要はないのだ。
「俺(たち)がいなきゃ」と思わせる力。
ママ一人で成立してしまうような店は、結束力は高まらないのだ。

その後のビジネスにおける成功哲学は、人に好かれること、または人を好きになること。
一人でできることには限界がある。
人を好きになって、または人に好かれて、周りを巻き込む(応援してもらいやすい環境をつくる)ことが重要なのです。

人によって実践できる、できないはあります。
実践しても続けることができる、できないで著者のような成功を手に掴めるかは分かれます。
ほとんどの人はできないでしょう。
でも、できない人の多くも著者の言葉に心を動かされるのではないでしょうか。
それくらい分かりやすく、力強い言葉の数々。
まずは実践してみることをおすすめします。

最初の半分だけでも価値のある本だと思います。

《教養のエチュード》

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忘れられた巨人

イギリス文学の最高峰であるブッカー賞受賞作家、カズオイシグロの7作目の長編作。
舞台は中世、アーサー王が姿を消した後のブリテン島。
2015年に英米で発売されるや、イシグロの「ファンタジー」ジャンルの挑戦として大きな話題となり、ベストセラーとなった。
ニューヨークタイムズでのSF作家ニール・ゲイマンの書評では「イシグロは、神話や歴史を取り込み、ファンタジー要素を道具立てに使用することを何一つ恐れなかった」と讃えた。

しかし、僕には全くよく分からなかった。
カズオイシグロは大好きな作家だけど、話がつかめない。
今までで3回読んだのにやはり分からなかった。
老夫婦が息子に会いに彷徨い歩く話で、霧が出ると言ってることが無茶苦茶になり、記憶が曖昧なまままた歩く。
それからドラゴンも登場する。
するけどよく分からない。

これはきっと教養の問題で、神話や歴史の素養がないと読み進めることができないのかもしれない。
元ネタを知らないとその良さが分からない。
きっとエグいくらい震えるサンプリングやパンチラインがそこかしこに散らばっているのだろう。

うーん。
もう一度成長した時に読み直したい。

《教養のエチュード》

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多動力

堀江貴文氏の著書。



相変わらず、ズバッと問題を解決するシンプルで力強い言葉の数々。
こんがらがった紐を一本ずつ解くようなことはせず、ザックリ根元にハサミを入れて切ってしまうような痛快さ。


日本の文化には一途な姿勢(一つのことに全てをかける)に美徳を感じる傾向がある。
野球のイチローやサッカーのカズが好きな日本人、ただ、誰もが彼らのような才能を持つわけではない。
そのことを皆気付いているにも関わらず、現実は見て見ぬフリ。
サムライ・スピリッツに美徳を感じるが、それはもはや幻想で。
それよりも、時代の流れの中、あらゆる産業の縦の壁が崩れた今、求められるのは多動力だと筆者は語る。


現在進行中で様々な業界が日々パラダイムシフトを起こしている。
以前とは全く異なった形態のビジネスモデルが突如として現れる。
しかも、その入れ替わりのスパンは短くなる一方だ。
そんな中、一つの分野にだけに捉われていては、気付けば浦島太郎の最後のようになってしまう。
つまり時代からの置いてけぼり。


必要なのは動的平衡。
動きながらバランスを保て、ということ。


この本の中で強く印象に残った言葉は、「仕事はリズムだ」の部分。
最大で、且つ、効率良くパフォーマンスを上げるためにはリズムが重要なのだ、と。
堀江氏はリズムを崩されることを極端に嫌う。
文面の長いメール、電話でのやりとり、移動中に急に話しかけられたり。
そのようなことでリズムを崩される(自分の時間を搾取される)ことに憤りを感じている。

なるほど、人にはそれぞれ呼吸(リズム)がある。
自分の呼吸を周りに合わせてばかりいると無駄なエネルギーを消耗する。

そして睡眠の大切さを語る。
寝ることはパフォーマンスに十分なエネルギーを蓄えることなのだ。


堀江氏は本質的な生命の律動に合わせ、生活する(仕事する)ことが何より重要だと言っているのだろう。
つまり、生き物の持つ最も基本的な部分さえしっかりと押さえていれば、あとは考え方と実行力でどこまでも変形(進化)できるのだろう。
堀江氏は一見、人間に対して消極的(ドライ)な印象を抱いているかのように感じるが、実際には誰よりも人間の進化(変形)への可能性を信じているのかもしれない。

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型破りの発想力

『型破りの発想力』
〜武蔵・芭蕉・利休・世阿弥・北斎に学ぶ〜

明治大学文学部教授の齋藤孝氏の著書。
この方の解説、そしてその解釈は本当分かりやすい。
特に偉人たちの作品を超訳するシリーズでは大変お世話になった。
今回は五人の偉人をに焦点を当て、「発想力」の観点からそれぞれを紐解く。
五人とも僕の大好きな人物。
特に武蔵以外の四人には多大なる影響を受けた。
既成概念を打ち壊し、新たな価値観を世に知らしめた面々。
能を大成した世阿弥のマーケティング力。
利休にも言えることだが、自らマイノリティとなり人々の視線を集めるその発想力は実に面白い。
芸人の松本人志氏が言っていたが「笑いはないところ、ないところを探す作業」、つまりある種手品師のように人々の集まった視線を別の方向へ惹きつける技術。
そこに驚き(意外性)が生まれる。
それを戦略的に演出する力は、現在の我々にも学ぶべき点は多い。
「型」があるから「型破り」、そもそも「型」がなければ「型なし」、といったのは勘三郎だっただろうか。(本書でも確か出てきたはず)

芭蕉のジャズセッションのような句会の話も興味深い。
言葉一つ変えることなく解釈によって作品性を高めるという離れ業。
即興的なクリエイティブ。
映画『死刑台のエレベーター』で音楽を担当したマイルスデイビスが映像を観ながら即興で曲をつけた話を引き合いに出し、芭蕉との共通点を見出す辺りもニクい齋藤孝!

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