河内のカフカ 第八話

連載小説『河内のカフカ』第七話

八尾で生まれ、八尾で育ち、八尾の工場で働く青年、水原翔平。
ある日、目が覚めると「虫」ではなく、「標準語圏内の人間」になっていた!

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河内のカフカ 第七話

 連載小説『河内のカフカ』第七話

八尾で生まれ、八尾で育ち、八尾の工場で働く青年、水原翔平。
ある日、目が覚めると「虫」ではなく、「標準語圏内の人間」になっていた!

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河内のカフカ 第六話

 連載小説『河内のカフカ』第六話

八尾で生まれ、八尾で育ち、八尾の工場で働く青年、水原翔平。
ある日、目が覚めると「虫」ではなく、「標準語圏内の人間」になっていた!

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河内のカフカ 第五話

連載小説『河内のカフカ第五話

八尾で生まれ、八尾で育ち、八尾の工場で働く青年、水原翔平。
ある日、目が覚めると「虫」ではなく、「標準語圏内の人間」になっていた!

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河内のカフカ 第四話

連載小説『河内のカフカ』第四話

八尾で生まれ、八尾で育ち、八尾の工場で働く青年、水原翔平。
ある日、目が覚めると「虫」ではなく、「標準語圏内の人間」になっていた!

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「弾道ミサイル……か」

丈の短いパジャマを着た翔平は宙を見つめ一人、布団の中で呟いた。
八柳裕の言葉である。



**********



「お前は金正恩やねんって! 」
例によって口から唾(つばき)を飛ばしながら八柳は言った。
白く泡のようなそれは月のあかりに濡れ、彗星のように光を放ち、そのまま見えなくなった。
「どういうことなの? 」
「お前はもうミサイルを飛ばすしかないねん! 」
沈黙が流れる。
聴こえてくるのは玉串川のたおやかなせせらぎだけだ。
あまりにも話が唐突で、あまりにも風が穏やかで、あまりにも桜と月のコントラストが美しい。
その夢に似た状況に翔平は急な睡魔に襲われた。
花の香りが妖しく漂う。
それは川上から川下へとゆったり流れゆく。
スイープタイプの時計の針のように、こよなくなめらかに。
もしかすると、今起きていることは全て夢なのではないか。
それにしても長い夢だ。春眠暁を覚えず。晴れない霞に桜の花びらが舞い踊る。
「何をぼんやりしとんねん」
「え? あ、ごめん。なんか急に眠たくなった」
「このタイミングで? 竜ジイか! 」
そう言って翔平の頭をはたいた。
「そういや、竜ジイ亡くなったね。淋しいよね」
叩かれた頭をさすりながら翔平は呟いた。
「お前な! 」
八柳の顔が小刻みに震えているのが分かる。
「何を竜ジイに引っ張られて、そこ広げとんねん!」
そう言ってまた唾を飛ばす。
そのパクパクした口が鯉のようで翔平は笑いそうになったけれど、今笑うとまた怒られると思ったので違うことを考えようとした。
にしても、どうして竜ジイのことを話して怒られるのだろうか。
翔平には解せなかった。
話し始めたのは八柳の方なのに、そのことについて感想を述べただけでこのような扱いを受ける義理はない。
思ったことくらい言ってもいいじゃないか。
いや、待てよ。
翔平は思った。
以前の自分ならば、確かに裕と同じような気持ちになっていたかもしれない。
はっきりとした理由を説明することはできないのだが、記憶の奥の方で、裕が怒る理由がなんとなく翔平にも分かるような気がした。
八柳はまだ鯉みたいに口をパクパクさせてぶつくさ言っている。
また押し寄せかけた笑いを堪え、気を紛らわすために翔平は言った。
「ごめんごめん、何の話だっけ? 」
お前の恋の話や!」
「え?……君の鯉の話でしょ? 」
その時、じゃばらん、と玉串川の水面に鯉の跳ねた音がしたので、翔平は堪えきれず噴いてしまった。
玉串川に映し出された丸い月と桜の木が煌めきながら世界を歪めた。



**********



「もうお前は発射ボタンを押すのみ、分かる? 」
玉串川沿いの高井公園、バネで動くブリキの遊具に跨った八柳は言った。
内股でベンチに座る翔平はぽかんとしている。
足の長さに慣れていないため、そうする他ないようである。
トランプがシリアに59発のミサイルを撃った。これの意味分かる? 」
ブリキの遊具の動きにつられないようゆっくり首をかしげる翔平。
北朝鮮、お前分かってるやろうな?っていうトランプのメッセージやんか」
今度は反対方向に首をかしげる。
跨った遊具を揺らしながら八柳は意気揚々と喋る。
「本来は起こるはずのないことが実際に起きてん。誰もトランプがミサイルを撃つなんて予想してへんかった。でも起きたやろ。起きてしまったら、北朝鮮は行動で示すしかない」
「ごめん、ねぇ、何の話しているの?」
「だから! お前がイケメンに生まれ変わった。こんなこと起きるはずのないことやん、絶対に。でも実際に起きてしもた。起きてしまったら、お前は行動で示すしかない」
そう言って八柳はブリキの遊具から飛び降りた。
「神田さんに告白やん」
決め台詞を吐いた役者のように、八柳の表情は恍惚としている。
「え?……無理無理無理
「無理ちゃうねん、これはチャンスやねん! 」
「何がチャンスなんだよ? 」
「ミサイルを撃つ格好のチャンス!」
「こんなの別にチャンスでも何でもないよ! 」
思わず立ち上がった翔平。
肩を上げて内股のなよっとした姿である。
「アホやなぁ、お前は。じゃあ、前までのお前やったら神田さんと話すことできてたんか? 」
思わず口をつぐむ。
「神田さんのあの表情見たやろ。あんなもん、ごっつぁんゴールやろ。お前がイケメンに生まれ変わらんかったら神田さんみたいな美人は、一生お前みたいなしょーもない男に焦点を合わせることさえなかったはずや」
「それはいくらなんでもひどいよ」
「でもホンマのことや! でも奇跡が起きてん。イケメンに生まれ変わったちゅうことは、神様がお前にミサイルを撃つチャンスをくれたっていうことや! 」
「ちょっと待ってよ……でも、裕は何でそうやって僕に告白させようと必死なの? 」
八柳は目を細めて翔平を見据えた。
「俺は、トランプとチョコレートケーキを一緒に食べとった習近平
「は? 」
「トランプに、北朝鮮どうにかしてくれ言うて無言の圧をかけられたわけよ。アシスト、アシスト
そう言って持ち上げる身振りを見せた。
翔平の中で八柳の目を細めたその顔が習近平と重なった。
「じゃあ、むしろ僕のミサイルを止めないとダメなんじゃないの? 」
目を閉じながら慈しむように翔平はかぶりを振った。
「サイは投げられたんや。ミサイルが放たれるのをただ待つのみ」
遠くを眺め、自分の世界に浸る八柳。
「ちょっと待ってよ、じゃあ本当の僕はどこ行ったの?」
「え? 」
「だって本当の僕がどこに行ったのかっていうのも大事じゃないの? 」
言われてみればそうだ、と考えた挙句、八柳の口から出た言葉。
「本当のお前は……金正男
「正男…………殺されてんじゃん! 」
玉串川の夜の桜並木、その間を流れる風は身を潜めるように凪いでいた。



つづく