16.02.21分、選曲&原稿朗読

16.02.21

「はぁ・・・おもんない。
日曜やのに何もやってへんやんけ。
妹も録画しとるしほんまに・・・
何やねん
はぁ・・・おもんないなぁ・・そろそろラジオでもつけとこか。
ん?なんや、これ。
プライマル・・・ラジオ?」

♪Basement Jaxx『Hush Boy』

チェック、ワンツーワンツー。
プライマルラジオ、プライマルラジオ。
あー、皆様、ご陽気はいかがでござんすか?

教養とユーモアをお送りする、プライマルラジオ。
ディレクター・TOMOKO
アシスタント・大根のりお
企画・構成・選曲はメインパーソナリティの嶋津亮太。

はーい、今週もやって参りました。
ファンタスティックで、クレイジーな時間でございます。
踊る準備はよろしゅうございますか?
私、嶋津亮太が、くすんでくすんで、くすみきった日曜午後に魔法をかけてしんぜましょう。

くだらない日常に刺激を。
ガラクタの中に砂金を。
豚に真珠を。猫に小判を。
カップラーメンにホワイトトリュフのスライスを。

残り56分の至高の時間を、皆様にお届けいたします(エレベーターガール風)。
まずは深呼吸、深呼吸。
興奮とリラックスのストライプ。
サウナ・水風呂・サウナ・水風呂・水風呂・サウナ。
交感神経を逆なで。
ついてこい、ついてこい。
地域FMで世界一面白いラジオを聞かせてやるぜ。



♪Patti Page『テネシー・ワルツ』

続いて参りましょう。
背中越しのショット。
風が吹いた、飛ばないように押さえるハット。
荒野に転がるタンブルウィード。
ウエスタンドア、キーコキーコ
両開きの扉を開けば、カウンター。
ゲーリー・クーパーだの、ジョン・フォードだの、クリント・イーストウッドだのよろしく、カウボーイハットを目深に被った粋な親父がこちらを一瞥。
本日のカクテル

『ジャックダニエル』

テネシーウィスキー。
蒸留するまではバーボンと同じ製法。
チャコール・メローイング

サトウカエデの木を角材にして乾燥
燃やして炭に
細かく破砕した炭をメローイング槽に入れる
メローイング槽を一滴一滴、蒸留液が10日ほどかけて通る(濾過)
→スムーズでまろやかな酒質になる
加水後、内側を焦がしたオーク樽で熟成

創業者のジャックダニエルは7歳でウィスキー作りに従事し、1866年、若干16歳でテネシー州リンチバーグに自らの蒸留所を建てます。
テネシー・ティとも形容されるミディアムへヴィの華やかな香りとまろやかな味わいが特徴。



ストーップ。

BGM C.O

何をちんたら、のんびりやっとるんだ。
新しい刺激に興味はないか?
おっと今目をそらした、お前。
お前だよ、お前。
人前では控えめなふりをして、実際には妄想大好き、好奇心の塊のようなお前。
日常の中にうまく紛れ込んでいるように見せかけてはいるが俺の目はだませない。

少しばかり頭をシェークしてもらおうか。
合法的に刺激が欲しいお前。
退屈から抜け出したいお前。
誰よりも欲張りなお前。
そんなお前にはこれをくれてやる。

今持っているショットグラス。
そう、その茶色い液体の入った小さなグラスだよ。
中身をシェーカーの中へ入れろ。
そこにドライジン、そしてペルノー。
氷を入れてシェークだ。

カクテルグラスに注いだか?
よし、ではいくぞ。
それを一気に飲み干せ。
宴の準備だ。

♪Basement Jaxx『Intro』~『Run 4 Cover』

どうだ。
まだ息はしているか?
そうか、頭が揺れ出したか、グラグラきたな、これは刺激が足りないと言っていたお前のためのカクテルだ。
その名も『アースクエイク』。
つまり、地震、だ。
ノスタルジーはもう要らない。
さぁ、なりふり構わず、踊れ、踊れ、踊れ。
わっはっはっはっはっは。



はーいご陽気に。
どんなもんだい?
楽しくなってきたろうな?
わけがわからんようになってきたろうな?
目の前が夢の風景。
きんぴかのきんきらら。
さぁ踊って、疲れて、お風呂に入って、ばななを食べよう。



ペルノーとはもともとアブサン
アブサンとは薬草系のリキュール。
ニガヨモギ・アニス・ウイキョウなどの複数のハーブとスパイスが主成分。

幻覚などの向精神作用があると言われている。
19世紀フランスの芸術家たちによって愛された。
安くてよく効くアルコールのため、多数の中毒者・犯罪者を出した。
詩人ポール・ヴェルレーヌ
画家ロートレック、ヴィンセント・ファン・ゴッホなど



♪辻井伸行『ショパン: 練習曲 #5 変ト長調, Op. 10/5, 『黒鍵』』

星がキラキラ
足の裏にちくちく
メープルシロップの雨は虹を描く
地面に散らばった星屑
ちくちく、いたたたた
何て美しいんだろう
目がチカチカ
光の乱反射
地べたがプラネタリウム
僕は夢の中にいるの?
ここはどこ?わたしはだれ?
月の重力は六分の一
心配事も六分の一
星がきらきら
頭の中にハレー彗星
逆さの宇宙で僕は、バームクーヘンを食べる

16.02.14分、選曲&朗読原稿

16.02.14

拝啓 世界一美しく、世界一卑怯な、貴方へ

あなたの笑顔は太陽を眺めるひまわりのようで、その先に僕がいないと思うと、木枯らしのように淋しく、夜の散歩のような物悲しさを覚えます。
それは舌先にできた口内炎のように静かな主張を繰り返し、できたてのかさぶたを何度も何度も引きはがして、痛みを忘れることを許してはくれません。
僕は今、あなたとの思い出がたくさん詰まった部屋で、一人、手紙を書いています。
(溜息)
正直、せいせいしています。
すっからかんの部屋をぐるりと見まわしては言い知れぬ幸福が私の胸を満たします。
あなたという存在は、僕への恐怖、そのものでした。

ただ、本当に、あなたと会えなくなるなんて、思ってもみませんでした。

♪『外は白い雪の夜』

教養とユーモアをお送りする、プライマルラジオ。
ディレクター・TOMOKO
アシスタント・大根のりお
企画・構成・選曲はメインパーソナリティの嶋津亮太。

この家で一緒に暮らし始めた最初の夜。
僕たちは喧嘩しました。
今でもはっきりと覚えています。

その日生まれて初めてウィスキーを飲みました。
家を飛び出したのはあなたではなく僕の方で。
最初がよくなかったのか、それからは暗黙の了解で、家を飛び出すのはいつも僕の方でした。
宛てもなく彷徨(さまよ)い歩き、目に入った鈍く光る電飾。
扉を開けると薄暗く、見慣れない景色が広がり、僕はバーのカウンターに腰をかけたのでした。
グラスの中で揺れる、ちょろんとした茶色い水は、それだけだと頼りなく。
水たまりの最後のような悲しさに、馬鹿にされたような気になって、一口で飲み下しました。
初めて飲んだウィスキーという名の酒は、冷たいくせに喉を通ると燃えるように熱い、不思議なものでした。
隣の客は「香ばしい」と言って同じものを飲んでいましたが、僕にはそれがやせ我慢にしか聞こえませんでした。

どうしてあなたは行ってしまったのでしょう。
恨んでも、恨んでも、恨み切れません。

あなたは水銀のように美しく。
それだけに禍(わざわい)をもたらします。

僕があなたへ向けて手紙を書けば、セレナーデのように響くでしょう。
どれだけ憎しみを込めたとしても、それは花の蜜のような恋文へと変わります。 

過ぎ去った時間がほろ苦く、少しだけ甘いのは、生きていくためかもしれません。
あなたとは違い、僕にはまだ生きていくことが許されているのかもしれません。

数え切れないほどの出逢いと別れが、朝から晩と、そこかしこで繰り返される中、僕とあなたは出会いました。
それは奇跡です。
そして別れが訪れました。
勝手に行ってしまったあなた。
いくら恨んでも、最後に出てくる言葉は同じでした。
いくら悲しくても、いくら辛くても、いくら悔しくても、いくら不甲斐なくても。
最後に出てくる言葉は「ありがとう」でした。



♪The Ronettes『Do I Love You』

さてさてさて
バレンタインでどっさりチョコをもらった貴方、お母さんからの義理チョコ一つ、自分の部屋でこっそり齧る貴方、今まさに徹夜で作った手作りチョコを前かごに入れて自転車を漕ぎ漕ぎ、愛しのあの人の元へ向かっている貴方。
「愛は宇宙だ」「宇宙は愛だ」「愛は光だ」
と言ったのはかの相対性理論を打ち出した20世紀を代表する天才物理学者、アインシュタイン博士。
時々のドキドキは、更年期障害、又は恋の力。
今日もあなたの恋のひと押しを、豆電球チカチカ、サンキューベリマッチ、エジソン君。

わたくしといふ現象は
ひとつの青い照明です。

Barプライマル開店。
マスター嶋津亮太による音と酒のマリアージュ、本日のカクテル。

『キスインザダーク』

ドライジン20ml
ドライベルモット20ml
チェリーブランデー20ml

主にステア
又はシェークしてカクテルグラスに注ぐ
マティーニにチェリーブランデーが加わった形
チェリーブランデーにより深みが増す
大人のムード漂うロマンティックなカクテル
キスインザダーク「暗闇のキス」



♪『歌劇「魔笛」第2幕 "地獄の復讐がこの胸にたぎる" (夜の女王のアリア)』

愛は宇宙ね、愛は宇宙よ、そう、愛は光。
あぁ、アインシュタイン博士、そうね、そうよ。

胸のドキドキが止まらない。
声を聴くだけで私は満たされる。
全身の毛穴が開き、毛という毛が逆立って。
動脈を流れる血液がぐつぐつ泡立ちながら全身を駆け巡る。
アインシュタイン博士。
これが恋なのかしら。
この爆発的な感情の歓びが、愛なのかしら。

「あ、もしもし。はい谷口です。牛乳を3本、お願いします。」

私は恋をした。
相手は街の牛乳屋さん。

「あ、もしもし。あ、あの谷口です。やっぱり5本でお願いします」

ただ私は彼に会ったことがない。

「あ、谷口です。もしもし。やっぱり10本でお願いします」

相手は受話器の向こう側。
つまり電話でしか話したことがない。

牛乳屋さんの声帯の震え。
セクシーな声。
淑(しと)やかな声。
悠然とした声。
尊大な声。
官能的な、声。
あぁ、抱きしめられたように体が熱くなる。
その響きが、私にこの上ない享楽をもたらす。

だから私の家には毎日のように大量の牛乳瓶が届く。
あぁ、アインシュタイン博士。
この瓶の山も宇宙なのかしら。

「あ、もしもし。谷口です。やっぱり今日は20本お願いします」

あぁ、アインシュタイン博士。アインシュタイン博士。



ending

全ての恋する者へ向けてこの歌を捧げます。

♪つじあやの『君のうた』

枯れかけの観葉植物
香りのしないキッチン
聴こえない寝息
上げっぱなしの便座
笑い声の響かないこの部屋の壁は冷たく

焦げた玉ねぎの匂いも
へたくそな鼻歌さえも
幸福の音色を奏でる一部だったことに気付いた

守るための言葉が
あなたを傷つけることしかできなかった
あなたを失って幾星霜
鈴の音に似た笑い声と美しい言葉が
天使のように部屋中を飛び交っていた日々
彼らの姿はもはやなく
目の前には無機質な景色が、ずんと広がっているだけで

いなくなった君を愛しても仕方がない
いなくなってから愛しはじめた滑稽な僕を、君は笑うだろうか

永遠はなくとも
その一瞬に永遠を感じることが出来たなら
それは恋だ
そう
それは愛だ

おすすめの本は?

本日はラジオ収録。

毎週リスナーの皆さんから、たくさんのお便りを頂きます。
その数は番組内で紹介しきれないほど。
ただ、全てに目を通しています。
その中の質問について書いてみました。

Q.僕はあまり本を読まないのですが、本を読まない僕でも楽しめる作品はありますか?

というもの。
読書に時間をかける余裕のある人は少ない。
何を基準に少ないかと言えば、その数は日本人の全体の半分に満たない。
もっと言うと活字を積極的に摂取しているのは1割程度ではないでしょうか?
これは仕方のないことで。
とにかく本への需要がないことが原因です。
質問への回答のまえに、少しだけ読書離れのことについて書いてみましょう。

例えばスマートフォン。
今やほとんどの人が所有しているのではないでしょうか?
これを持つだけで月に1万円近くの費用がかかります。
はっきり言って娯楽、嗜好品です。
正直、なくても生きていける。
でも、皆その浪費を知った上で使い続けます。
それは持たないことのリスクの方が高いから。

スマートフォンを何故持つのか?
大半の理由としては『皆が持っているから』ではないでしょうか。
仕事にしろプライベートにしろ大多数がスマートフォンを持っているこの状況で、自分だけ手放すということは『共通言語』がなくなるようなもの。
それはSNSかもしれないし、人気アプリかもしれないし、スマートフォンの持つ携帯電話機能のことかもしれない。
スマートフォンがなければ話が合わない。
この状況を作り出したAppleは『スマートフォンを持たなければ共通言語を習得できない』というレベルの大きな需要を生みました。

それに比べ、本にはスマートフォンのような必要性、つまり需要がないのです。
本を読まない人が多い理由は、簡単に言えばこれだけのことです。
必要性のないものは優先順位がどんどん落ちていく。
あらゆる娯楽の後回し後回しとなって、気がついた頃には生活から随分と離れた場所に置き去りにされているのです。
読書はその最たるものと言えるでしょう。

本を読む必要があれば、誰もが本を読むはずです。
スキューバーダイビングをする時に酸素ボンベを使うのは、水の中では酸素が絶対に必要だから。
現代人にとってスマートフォンは酸素であり、読書は酸素ではないのです。


そしてもう一点。
読書以上に刺激的で、且つ安易に理解できるメディアが増えたということ。
ラジオ、レコードにはじまり、テレビ、映画、インターネット。
これだけ視覚的な映像や聴覚的な音楽を簡単に触れる機会があると、目で文字を追って頭の中の射影機で映像を再現する(想像する)といった面倒な工程を必要とする読書は流行りません。
映像や音楽と違って、時間の進み方が遅いということも要因でしょう。

ただ、一手間、二手間とかける工程が多いのですから奥が深いのは断然読書の方だとは思います。
工程が多いということは、それだけ受信側の能力を求められる、ということですから。
つまりテレビやネットは見たままで思考を止めますが、読書の場合、読者の想像力に委ねる割合がどうしても発生します。
ですから自分の想像力を磨けば限界無しに作品をブラッシュアップし続けることができるのです。
その楽しみ方を知れば読書の魅力の虜になるのだと思うのですが。
ただ例え、その楽しみ方を理解したとしても、大多数には流行らないと思います。
それはやはり『需要』の問題に尽きるでしょう。
必然的な要素がなければ、劇的に広がることはありません。
活字に携わる人間として、読書の需要を作り出すということも仕事の一環となるでしょう。


リスナーからの質問に戻ります。
私のおすすめする本は伝記です。
一冊の本を書き上げることができるような人物の物語はいつだってドラマティックであり、魅力的なものです。
描かれる人間はそのほとんどがマイノリティであり、必ず人生の逆境の中から這い上がっています。
それもそのはずで、大多数に混じって埋もれる人や人生自体が順風満帆な人は物語にはなり得ません。
『人と違う』から人を惹きつける物語となるのです。
その上伝記には逆境から抜け出るヒントや、思考力の訓練にもなります。
そういった意味では物語としても面白いし、人生のヒントが散りばめられた伝記という形態は、読書経験の浅い人にとっても親しみやすいものではないでしょうか。

16.02.07分、選曲&朗読原稿

16.02.07

波のことを考える。
豊饒の海のその切れ端。
寄せては返す波。
砕け散る飛沫、幾千万の白金(しろがね)の泡を吹き上げる波。
永遠に形を変え続ける波。
朝日を浴びた光の板が、粉々に砕けた後の、きらめきが。
潮風の中をくぐり抜け、鮮やかな潮騒を奏でながら。

波と同じように、君は永遠だろうか。

♪Oasis『Champagne Supernova』

あぁ、波の音を聴いていると落ち着く。
この世に生を受けてから、僕は酸化しているんだよ。
一秒、一秒、腐っているんだよ。
なんて悲しいんだ。
そして、なんて貴いんだ。
僕たちは腐りながら生きていくんだ。

命の儚さよ。
砕け散る波、旋律の中で優雅に踊る君。
僕たちは決してこの一瞬を残すことはできない。
絵画、音楽、言葉、物語、あらゆる芸術は、その一瞬を残すために勇猛果敢に立ち向かう。
しかし、それは到底無理な話で。
戦士たちは志半ば、幾多の困難に打ちひしがれる。


教養とユーモアをお送りする、プライマルラジオ。
ディレクター・TOMOKO
アシスタント・大根のりお
企画・構成・選曲はメインパーソナリティの嶋津亮太。


一瞬を残すこと。一瞬を想起すること。
それは想像力にしかできない
あらゆる芸術も、あらゆる学問も、あらゆる宗教にも不可能なことが。
僕たちの頭の中では行われる。
想像力だけが、一瞬を永遠にする。
あの日に戻れる。
イメージの中で君に会える。

発砲する生命。
美しいものは醜い。
醜いものは美しい。

天地(てんち)開闢(かいびゃく)。
Earth、この地球という名の星でEdenとHeaven、地上と天を繋ぐものをArt、芸術と言った。
分離した世界を繋ぐのが芸術であるならば、
想像力は繋がりもなく、何処へでも僕を連れていく。

シャンパンの気泡が祝祭的に天へ向かって踊りながら昇るように。
落雷の後にバラが咲き誇る、その優美に。



♪Chick Corea『It Could Happen To You』

時間は続く、続く。
続きと続きの中の点、アクセントは角砂糖のごとくぱちぱちと弾ける。
ぎぎぎ、と、Barプライマルの扉が開きます。
マスターの嶋津亮太による音と酒のマリアージュ。
本日のカクテル。

今日は果実とリキッドの融合。
食べながら飲み、飲みながら食べるという先住民スタイル。
シェーカーは口の中。
ダイナミックな味わいをご体感くださいませ。


温州ミカンをほおばりながら・・・

『ウォッカマティーニ』

ウォッカ40ml
ドライベルモット10ml
しっかりステア

イチゴをかじりながら・・・

『苺でジェントルマンズショコラ』

ウィスキー30ml
チョコレートリキュール(モーツァルト)15ml
生クリーム15ml
シェーク

『苺でチョコレートマティーニ』

ジン40ml
チョコレートリキュール(モーツァルト)10ml
しっかりステア



♪Yann Tiersen『A Quai』

僕が左手でお箸を持つようになってから、世界はグルグル変わり出した。
まるで誰かの夢の中に紛れ込んでしまったみたいに、今までとは違った世界が広がる。
そこらじゅうで色があべこべになっていたり、知らない人から話しかけられたり。
その人たちは僕にいくつかの問題を残していった。
その答えは2、3日の間にまた別の違う人たちが示し合わせたように教えてくれる。
不思議なことばかり。
それでも僕は左手で蛇口をひねり、手を洗った。
左手でえんぴつを握り、左手で絵を描いた。
券売機で切符を買うのも左手で、傘をさすのも左手、髪をかき上げるのも左手だ。
挨拶するのも左手だし、涙を拭くのも左手。
すると見えないものが見えだした。
服を着た小さなネズミが僕に話しかける。
その小さなネズミの、名前はチョッカ。栗色のサロペットを着ている。
僕はチョッカを胸のポケットに入れて自転車に乗り、下り坂を走らせた。
風を切りながら、僕らは進む。
速くなるにつれて、視界は狭くなる。
チョッカは胸ポケットの中から顔を出しながら目を細めた。
カタカタカタカタ、車輪に何か当たる音がする。
知らないそんなことは。

「もう少しだよ、もう少し」

チョッカが叫ぶようにそう言った。
ハンドルを握る力が強くなる。
高いところから真っ逆さまに落ちる時のように、ひんやりとする。
それまで気が付かなかったけれど、どうやら僕は怖いみたい。
すると風の中に不思議なものが現れた。
渦巻き型のキャンディを持った鼻の大きなおじさん。
渦とは逆方向の目の動き。
ぐるぐるぐるぐる、させながら、地面が響くような大きな声で笑っている。
そりゃあびっくら、驚いたさ。
貝殻を磨いたみたいに七色に揺れて輝くおじさんの目の中へ、僕らは吸い込まれていったんだから。

M C.O

「そんなことより、色の黒い元野球選手、捕まっちゃったね」

16.01.31分、選曲&朗読原稿

16.01.31

はーい、始まって参りました。
プライマルラジオ。
飄々とはじまり、そ知らぬうちに終わりを告げる。
知らない人は知らないが、知っている人は知っている。
至極、当たり前の番組。
自ら実験ラジオと銘打って、あらゆる試みを繰り返す。
ラジオ界のヌーベルバーグ。

新進気鋭だけが唯一の取柄であるメインパーソナリティ。
知らない人は知らないが、知っている人は知っている。

アーハン?
炭鉱カナリヤよろしく、数々の試行錯誤、花も散りしがあはれなり。
会心の手応え、ごく稀に。
慙愧(ざんき)の念はいくえにも。
たった58分の刹那、一期一会、本日、出会えた貴方に向けて。

言葉のフレグランス、言葉のフレグランス、言葉のフレグランス。
テクニカル、フレミングの法則。

意味が分からないけれど、何だか面白い、そんな感覚の想起を皆様、お一人お一人にプレゼント出来れば、という次第であります。

では行きましょうか。
日本語ということの他、全く意味が分からない悪夢を体験している貴方。
ご陽気に、はい、ドン。

♪Prince Buster『Lion』×Yael Naïm『Toxic』

ルーツレゲエ。
スカとロックステディは心の扉を開く処方箋。
伽羅(きゃら)、白檀(びゃくだん)。
香木(こうぼく)で焚いた、鮮やかな匂いの煙を身にまとい、
オクターブの跳躍を奏で、いざ行かん。

教養とユーモアをお送りする、プライマルラジオ。
ディレクター・TOMOKO
アシスタント・大根のりお
企画・構成・選曲はメインパーソナリティの嶋津亮太。

「天使のように大胆に 悪魔のように繊細に」
と言ったのは、かの有名な巨匠・黒澤明。

私、先日、「グッジョブ」という言葉を、「あっぱれ」に置き換えるという離れ業を見せました。
一種の言葉の先祖返り。
したり顔でむふふんと。
まずはプリンス・バスターとイエール・ネームのミックスからお楽しみください。


♪Benny Goodman『Blue Skies』

さっそく続いて参りましょう。
チカチカチカ。
看板の電飾が点灯。
トィンクル・トィンクル。
Barプライマルの営業時間を迎えました。
マスターの嶋津亮太による音と酒のマリアージュ。
本日のカクテル。

ん~、ノスタルジー。
ベニーグッドマンのバンドが織りなす音の洪水。
旋律は美しさよりも快活さと協和の心を。
少し荒っぽい、賑やかな演奏には

スコッチウィスキーでも飲んで頂きましょう。
アイラモルトの女王として名高い、ボウモアをニートで。
ニートというのはゲール語で「ストレート」という意味でございます。

はい、ここまで一体何を言っているのか分からないという人。
それから、ここまで私が言ったこと全て理解したマニアックなあなた。
お互いに手を繋ぎ、共に先へ進みましょう。

ロブロイ
スコッチウィウキー45ml
スウィートベルモット15ml
アンゴスチュラビターズ1dash

ステア。
最後にマラスキーノチェリーをピンに差してドロップ。
スコッチをライウィスキーに変えると『マンハッタン』


ロブロイは18世紀、スコットランドに実在したヒーローの名。

1dashは5、6滴のこと



♪Burl Ives『Lavender Blue』

『星の下の懺悔』

僕は卑怯(ひきょう)な人間です。
僕は軽薄(けいはく)な人間です。
僕は損得勘定で判断する、哀(あわ)れな人間です。

お星様。
謝りたいことがたくさんあります。
ごめんなさい。
意味のない嘘をついてごめんなさい。
寝ていないだとか、読書が趣味だとか、政治経済においての知ったかぶりだとか。
僕は8時間寝ないと体がスッキリしない上に、無類のテレビ好きです。
テレビが好きな割にニュースは見ません。新聞も読みません。
ヤフーニュースで芸能人のゴシップをチェックすることくらいです。
何故自分がそのような無意味な嘘をつくのかは分かりません。
多分、いい格好を見せたいだけなのでしょう。
でも、それがいい格好なのかというと、よく考えてみれば僕には分かりません。

お星様。
ごめんなさい。
僕にはここで言えないような、悪いこともたくさんしています。
人に知られると軽蔑されるようなこともたくさんしています。
お星様。
わがままばかり言ってごめんなさい。
お星様。
自分の気分で意見を変えてごめんなさい。
お星様。
人の悪口を言ってごめんなさい。
それも、本人の前ではいい顔をして、陰でクソミソにこきおろして、ごめんなさい。
周りが悪口に同調してくれて気分がよくなってしまってごめんなさい。
でも、同調してくれた相手を少しだけ軽蔑してしまって、ごめんなさい。

お星様。
この世はすばらしき光で、溢れています。
自分の意志を曲げず、損ばかりしている人。
人の手助けばかりして、騙されている人。
誰の悪口も言わずに、笑顔を絶やさない人。
勇気をもって、人が嫌がる仕事を引き受けることのできる人。
この世はすばらしき光で、満ち溢れています。
世界は燦然と輝いています。

でも、たまに、そんな人を見て
「嘘だ」とか「馬鹿だ」とか、要らぬ邪推を抱いてしまい、ごめんなさい。

お星様。
ごめんなさい。
ごめんなさい。
ごめんなさい。
この世はすばらしき光で、満ち溢れています。